
「せっかく注文住宅を建てるなら、夏は涼しく冬は暖かい家にしたい」
そう願って家づくりを始めたものの、UA値やC値といった専門用語に戸惑っていませんか?
実は「高気密・高断熱」には明確な定義がなく、ハウスメーカーによって性能に大きな差があるのが現状です。
言葉のイメージだけで選んでしまうと、「新築なのに寒い」「結露がひどい」と後悔することになりかねません。
この記事では、本当に快適な家を見極めるための「数値基準」と、メリット・デメリットをプロの視点で徹底解説します。
30年後も「建ててよかった」と思える家づくりのために、ぜひ最後までお読みください。
目次
そもそも「高気密・高断熱」とは?

高気密・高断熱住宅とは、簡単に言えば「家の隙間をなくし、外気の影響を受けにくくした家」のことです。
従来の日本の住宅は「風通しの良さ」を重視していましたが、現代の住宅性能においては「室内の快適な空気を逃さないこと」が最優先されます。
この性能を実現するために、「断熱」と「気密」という2つの要素が不可欠なのです。
それぞれがどのような役割を果たしているのか、具体的に見ていきましょう。
高断熱とは「魔法瓶」のような保温性能
高断熱とは、壁・床・天井などに断熱材を入れたり、高性能な窓ガラスを使ったりして、熱の移動を遮断することです。
イメージとしては「魔法瓶」や「保冷バッグ」に近いでしょう。
断熱性能が高い家は、冬は室内の暖かさを外に逃がさず、夏は外の猛暑を室内に入れません。
その性能は「UA値(外皮平均熱貫流率)」という数値で表されます。この数値が小さいほど、熱が逃げにくい高性能な家と言えるのです。
断熱性能を表す「UA値(外皮平均熱貫流率)」とは
UA値(単位:W/m²K)は、家の内部から床、外壁、天井、開口部などを通して、外部へどれくらいの熱量が逃げるかを表した数値です。
国が定める「省エネ基準」や、よりハイレベルな「ZEH(ゼッチ)基準」などがあり、住む地域によって求められる数値が異なります。
数値が低いほど断熱性能が高く、冷暖房効率が良い省エネ住宅であることを示します。
高気密とは「隙間のない」密閉性能
高気密とは、窓枠や壁、床などの接合部分にできる隙間を極限まで減らし、密閉性を高めることです。
どんなに分厚い断熱材を使っても、家に隙間だらけでは意味がありません。
冬場に冷たい隙間風が入ってきたり、暖めた空気が逃げたりするのを防ぐのが気密の役割です。
この性能は「C値(相当隙間面積)」という指標で判断されます。
気密性能を表す「C値(相当隙間面積)」とは
C値(単位:cm²/m²)は、家の延床面積1平方メートルあたりに、どれくらいの隙間があるかを表す数値です。
例えば、C値が5.0ならハガキ5枚分、C値が1.0ならハガキ1枚分程度の隙間が家全体にある計算になります。
C値が低いほど隙間が少なく、施工精度が高い家である証明になります。
UA値と異なり、現場での実測測定が必要です。
なぜ「気密」と「断熱」はセットでなければならないのか
結論から言うと、気密と断熱は「両輪」の関係であり、どちらか一方が欠けると性能は発揮されません。
どれだけ高性能な断熱材(ダウンジャケット)を使っていても、前のチャックが開いていれば(隙間があれば)、そこから冷気が入り込んで寒さを感じます。
住宅も同様で、断熱材の性能を100%引き出すためには、高い気密性が不可欠なのです。
セットで考えることが、失敗しない家づくりの第一歩です。
高気密・高断熱住宅にする5つのメリット

初期費用をかけてでも性能を高めることには、単なる「快適さ」以上の大きな価値があります。
住む人の健康や家計、そして建物の寿命にまで良い影響を与えるからです。
ここでは、高気密・高断熱住宅に住むことで得られる代表的な5つのメリットを紹介します。
これらを知ることで、なぜ今の家づくりにおいて性能が重視されているのかが理解できるでしょう。
1. 年中快適な室温をキープ(ヒートショック予防)
最大のメリットは、リビング、廊下、浴室、トイレなど、家中の温度差が少なくなることです。
冬場のお風呂やトイレで感じる急激な寒さは、血圧の乱高下を招き「ヒートショック」の原因となります。
高気密・高断熱住宅なら、最小限の冷暖房で家中を一定の温度に保てるため、身体への負担が大幅に軽減されます。
「健康寿命を延ばす家」と言っても過言ではありません。
2. 光熱費(冷暖房費)の大幅な削減
魔法瓶のように保温性が高いため、一度暖めたり冷やしたりした空気が長時間持続します。
エアコンの稼働時間が減り、設定温度を控えめにしても快適に過ごせるため、毎月の光熱費を大幅に抑えることが可能です。
建築時のコストは多少上がりますが、30年、50年と長く住むことを考えれば、ランニングコストの削減分で十分に元が取れる投資と言えます。
3. 計画換気が正しく機能し、空気がきれいになる
2003年の建築基準法改正により、住宅には「24時間換気システム」の設置が義務付けられています。
しかし、家に隙間が多いと、換気扇から遠い場所の空気が淀んでしまいます。
ストローに穴が空いていると飲み物が吸えないのと同様に、家も気密性が高くないと計画通りに空気が流れません。
高気密な家こそ、新鮮な空気を常に取り込める清潔な環境を維持できるのです。
4. 結露やカビの発生を防ぎ、建物の寿命が延びる
断熱性が高い窓や壁は、外気との温度差による表面結露を抑えます。
さらに重要なのが、壁の中で発生する「内部結露」のリスク低減です。
壁内で結露が起きると、断熱材がカビだらけになったり、柱が腐ったりして家の寿命を縮めます。
適切な気密・断熱施工は、湿気の侵入を防ぎ、家の構造躯体を長く守る役割も果たしているのです。
5. 防音効果・遮音性が高い
気密性が高いということは、音の出入り口となる「隙間」がないということです。
外からの車の騒音やご近所の話し声が聞こえにくくなり、静かな室内環境が手に入ります。
同時に、室内で映画を見たりピアノを弾いたりしても、音が外に漏れにくくなります。
プライバシーを守り、ストレスフリーな生活を送る上でも、高気密・高断熱は有効です。
【重要】高気密・高断熱住宅のデメリットと対策

メリットが多い一方で、いくつかのデメリットや注意点も存在します。「こんなはずじゃなかった」と後悔しないためには、事前にネガティブな側面を知り、対策を講じておくことが重要です。
ここでは、よく挙げられるデメリットと、それを解消するための具体的な方法を解説します。
これらを理解していれば、恐れる必要はありません。
建築コスト(坪単価)が高くなる
高性能な断熱材や樹脂サッシを使用し、隙間を埋める丁寧な施工を行うため、一般的な住宅よりも坪単価が高くなります。
しかし、前述の通り光熱費の削減効果や、結露によるメンテナンス費用の抑制効果があります。目先の建築費だけで判断せず、30年間の総住居費(ライフサイクルコスト)で比較検討することが大切です。資金計画は余裕を持って行いましょう。
施工精度に左右されやすい(業者の技術力が必要)
高気密・高断熱住宅を実現するには、設計上のスペックだけでなく、現場の大工さんの高い技術と知識が求められます。
わずかな隙間や断熱材の施工不良が性能低下に直結するため、施工実績が乏しい会社に依頼するのはリスクがあります。
「高断熱」を謳っていても「高気密」には触れない会社も存在します。
実績のある工務店やメーカーを見極める目を持つことが必要不可欠です。
室内が乾燥しやすくなる
冬場、外の乾燥した空気を取り込んで暖房すると、相対湿度が下がって乾燥を感じやすくなります。
これは気密性が高い証拠でもありますが、喉の痛みや肌荒れを防ぐために加湿対策が必要です。
加湿器の使用はもちろん、洗濯物の室内干しなども有効です。
最近では、湿度交換も行う「全熱交換型」の換気システムを採用して、乾燥を和らげる方法も人気があります。
石油ストーブやファンヒーターが使えない場合がある
気密性の高い部屋で開放型(燃焼ガスを室内に放出するタイプ)の石油ストーブやガスファンヒーターを使うと、一酸化炭素中毒のリスクが高まります。
また、燃焼時に大量の水蒸気が発生し、結露の原因にもなります。
高気密住宅の暖房は、エアコンや床暖房、パネルヒーターなど、空気を汚さない器具を使用するのが基本ルールです。
「息苦しい」は誤解!ただし「内部結露」には注意
「気密性が高いと息苦しいのでは?」と心配する声がありますが、24時間換気が稼働しているため息苦しくなることはありません。
むしろ怖いのは、中途半端な施工による「内部結露」です。
気密シートの施工が甘いと、湿気が壁内に入り込み抜けなくなります。
これを防ぐには、確実な気密施工と、湿気を逃がす通気層の確保が重要です。
これも依頼先の技術力に依存する部分です。
失敗しない!本当に性能が良い住宅会社の選び方・基準

「高気密・高断熱」という言葉は、どの住宅会社でも使えます。
だからこそ、営業トークではなく「客観的な数値」で判断することが、失敗しないための唯一の方法です。
ここでは、契約前に必ず確認すべき具体的なチェックポイントを紹介します。
これらを質問することで、その会社の性能に対する本気度が見えてくるはずです。
目指すべき数値の目安【UA値・C値の推奨ライン】
これから家を建てるなら、以下の数値を目標にすることをおすすめします(※6地域:東京・大阪などの温暖地の場合)。
- UA値(断熱):0.46以下(HEAT20 G2グレード相当)
ZEH基準(0.6)よりもさらに高いレベルです。これくらいあれば、冬でも暖房一台で快適に過ごせる可能性が高まります。 - C値(気密):0.5〜1.0以下
最低でも1.0以下、できれば0.5以下を目指したいところです。経年劣化で隙間が増えることも考慮し、新築時は可能な限り0に近い数値が望ましいです。
「気密測定」を全棟実施しているか確認する
C値は計算で出せるものではなく、専用の機械を使って現地で測定しないと分かりません。
「うちは高気密です」と言いながら、気密測定を行っていない会社は要注意です。モデルハウスの数値ではなく、「私が建てる家の気密測定をしてくれますか?」と聞いてみましょう。全棟実施を標準にしている会社なら、施工品質に自信を持っている証拠です。
窓(サッシ)の仕様をチェックする
住宅の中で最も熱が出入りするのは「窓」です。ここが弱ければ、いくら壁を断熱しても意味がありません。
アルミサッシは熱を伝えやすいため避けましょう。「オール樹脂サッシ」または「木製サッシ」を選び、ガラスは「Low-E複層ガラス(ペアガラス)」以上、予算が許せば「トリプルガラス」を採用するのが理想です。窓への投資は、費用対効果が非常に高いポイントです。
換気システムの種類(第1種換気 vs 第3種換気)
換気システムには大きく分けて2種類あります。
- 第1種換気(熱交換型): 排気する熱を回収して、給気する空気に戻す仕組み。室温の変化が少なく省エネですが、導入コストは高めです。
- 第3種換気: 自然給気+機械排気。コストは安いですが、冬場に冷たい外気がそのまま入ってきます。
高気密・高断熱の性能をフルに活かすなら、熱ロスが少ない「第1種換気(熱交換型)」との相性が抜群です。
高気密・高断熱に関するよくある質問(FAQ)

最後に、高気密・高断熱住宅を検討している方からよく寄せられる質問にお答えします。
Q. 窓を開けて換気してもいいですか?
- もちろん可能です。
気密性が高いからといって、窓を開けてはいけないわけではありません。
春や秋などの気候が良い時期は、窓を開けて風を通すと気持ちが良いものです。
ただし、真夏や真冬は窓を閉めて24時間換気システムに任せた方が、室温・湿度を一定に保てて省エネになります。
Q. 固定資産税への影響はありますか?
- 直接的な増税はありませんが、評価額が上がる可能性はあります。
高機能な設備や全館空調などを導入すると、資産価値が高いとみなされ評価額が上がることがあります。
一方で、「長期優良住宅」や「ZEH」の認定を受けることで、固定資産税の減税措置や補助金を受けられるメリットの方が大きいケースが一般的です。
Q. 高気密住宅はシックハウス症候群になりやすい?
- むしろ逆で、リスクを低減できます。
かつては建材の化学物質が原因でシックハウス症候群が問題になりましたが、現在は24時間換気が義務化されています。
高気密住宅は「計画通りに換気できる」ため、汚れた空気を確実に排出できます。
隙間だらけの家の方が換気不足になりやすく、リスクが高いと言えます。
まとめ:数値に裏付けられた「本物の高気密・高断熱」を選ぼう
高気密・高断熱住宅は、単なるトレンドではなく、家族の健康と資産を守るための「標準スペック」になりつつあります。
- 断熱(UA値)はG2グレード(0.46以下)を目指す
- 気密(C値)は1.0以下を約束し、測定を行う会社を選ぶ
- メリットだけでなく、乾燥対策などのデメリットも理解する
この3点を押さえておけば、業者選びで迷うことは少なくなります。
これから何十年と暮らす大切な住まい。「なんとなく暖かそう」というイメージではなく、しっかりとした数値に裏付けられた快適な家を手に入れてください。
まずは、気になる工務店やハウスメーカーが「気密測定を行っているか」を確認することから始めてみてはいかがでしょうか。

