
マイホームを建てる際、「地盤改良工事が必要」と言われて不安を感じていませんか?
予期せぬ費用に戸惑う方も多いでしょう。地盤改良工事は、建物の安全性を確保するために欠かせない重要な工程です。
この記事では、地盤改良工事の基礎知識から工法ごとのメリット・注意点、そして最新の費用相場まで詳しく解説します。
記事を読むことで、地盤改良工事の必要性を理解し、適切な工法選択と予算計画が立てられるようになります。
安心して家づくりを進めるために、ぜひ最後までご覧ください。
目次
地盤改良工事とは?

地盤改良工事とは、軟弱な地盤を強化し、建物を安全に支えられる状態にする工事のことです。
地盤調査の結果、地盤の支持力が不足していると判断された場合に実施されます。
地盤が弱いまま建物を建てると、不同沈下や傾きが発生し、建物の構造に深刻なダメージを与える恐れがあります。
2007年に住宅瑕疵担保履行法が施行されて以降、新築住宅では地盤調査が事実上義務化されました。
調査結果に基づいて適切な地盤改良を行うことで、長期的に安全な住まいを実現できます。
地盤改良工事の3つの工法
地盤改良工事には、地盤の状態や軟弱層の深さに応じて3つの代表的な工法があります。
- 表層改良工法
- 柱状改良工法
- 小口径鋼管杭工法
それぞれ特徴や適用範囲が異なるため、地盤調査の結果に基づいて最適な工法を選択することが重要です。
1.表層改良工法
表層改良工法は、セメントを使用して地表周辺を固める地盤改良工事で、軟弱な地盤が地表から2m程度までの深さにある場合に適用される工法です。
地表面を掘削し、セメント系固化材を土と混ぜ合わせて強固な地盤層を形成します。
比較的浅い軟弱層に対応できるシンプルな工法で、工期も短く済むのが特徴です。
狭小地でも施工可能な点も大きなメリットと言えます。
ただし、地下水位が高い土地や急勾配の土地では施工できない場合があります。
3つの工法の中では最も費用を抑えられる点が魅力です。
2.柱状改良工法
柱状改良工法は、軟弱地盤が地表から2m以上8m程度の深さまである場合に用いられる工法です。
地面に穴を開け、セメント系固化材を注入しながら撹拌することで、円柱状の強固な支持体を複数形成します。
この柱が建物の荷重を深部の支持層まで伝達する仕組みです。
表層改良では対応できない深い軟弱層にも対応可能で、戸建て住宅で最も多く採用される工法となっています。
30坪程度の建物であれば、通常2~3日程度で施工が完了します。
3.小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法は、軟弱地盤が2m以上30m程度の深さまである場合に適用される工法です。
鋼鉄製の杭を支持層となる硬い地盤まで打ち込み、建物を支える土台を作ります。
3つの工法の中で最も深い軟弱層に対応でき、地盤強度を高められる点が最大の特徴です。
狭小地や変形地でも施工可能で、工期も比較的短く済みます。
ただし、杭を打ち込む際に騒音や振動が発生するため、住宅密集地では近隣への配慮が必要になります。
地盤改良工事が必要なケース

地盤改良工事が必要になるのは、地盤調査の結果、地盤の支持力が建物の荷重に対して不十分と判断された場合です。
具体的には、元々水田や沼地だった土地、海や川の近くで埋め立てられた土地、傾斜地を造成した盛土部分などが該当します。
また、地名に「沼」「田」「池」などの水に関する漢字が含まれている場所は、過去に軟弱地盤であった可能性が高いと言われています。
地盤調査は主にスウェーデン式サウンディング試験で行われ、その結果に基づいて改良の要否と工法が決定されます。
地盤改良工事の工法ごとのメリットと注意点
それぞれの工法には独自のメリットと注意すべき点があります。
費用や工期だけでなく、土地の特性や将来的な土地活用も考慮して選択することが大切です。
表層改良工法のメリット・注意点
メリット
表層改良工法の最大のメリットは、3つの工法の中で最も費用が安く抑えられる点です。
工期も数日程度と短く、狭小地でも施工可能なため、都市部の限られたスペースでも対応できます。
施工方法がシンプルで、比較的多くの業者が対応可能なため、業者選定の選択肢も広がります。
また、将来的に土地を売却する際も、改良材の撤去が比較的容易で、土地の資産価値への影響が少ない点もメリットと言えるでしょう。
注意点
表層改良工法は、対応できる軟弱層の深さが2m程度までと限定される点に注意が必要です。
地下水位が高い土地では、セメント系固化材が適切に硬化しない可能性があります。
また、急勾配の土地では施工が困難な場合があります。
改良後は、セメント系固化材の影響で土壌がアルカリ性に変化するため、将来的に畑や庭として土地を活用したい場合は、土壌改良が別途必要になる可能性があります。
向いている土地
表層改良工法は、軟弱層が浅く地表から2m程度までの土地に適しています。
平坦で地下水位が低い土地であれば、より効果的に施工できます。
比較的小規模な戸建て住宅や軽量な木造建築に向いている工法です。
予算を抑えたい方や工期を短縮したい方にとって、第一選択肢となる工法と言えます。
柱状改良工法のメリット・注意点
メリット
柱状改良工法は、表層改良では対応できない深さの軟弱層にも対応できる汎用性の高さが最大のメリットです。
戸建て住宅で最も多く採用される実績があり、信頼性も高い工法と言えます。施工後の地盤保証も充実しており、長期的な安心が得られます。
比較的静かに施工できるため、住宅密集地でも近隣トラブルのリスクが低い点も魅力です。
30坪程度の建物なら2~3日で施工が完了するため、工期への影響も最小限に抑えられます。
注意点
柱状改良工法では、セメント系固化材を大量に使用するため、将来的に土地を売却する際や更地に戻す際に、改良材の撤去費用が高額になる可能性があります。
また、地中に六価クロムが発生するリスクがあるため、土壌汚染対策が必要になる場合もあります。
支持層が非常に深い位置にある場合は、この工法では対応できず、小口径鋼管杭工法を選択する必要があります。
費用も表層改良より高くなる点は考慮すべきポイントです。
向いている土地
柱状改良工法は、軟弱層が地表から2m以上8m程度の深さまである土地に適しています。
一般的な戸建て住宅用地として最も多いタイプの地盤条件に対応できます。
住宅密集地で騒音を抑えたい場合や、中程度の深さの軟弱層を改良したい場合に最適な選択肢となります。
小口径鋼管杭工法のメリット・注意点
メリット
小口径鋼管杭工法は、3つの工法の中で最も深い軟弱層に対応でき、地盤強度を最も高められる点が最大のメリットです。
鋼管は劣化しにくく耐久性に優れているため、長期的な安全性が確保できます。
狭小地や変形地、傾斜地でも施工可能な適応性の高さも魅力です。
セメント系固化材を使用しないため、土壌汚染のリスクが低く、将来的な土地活用の自由度も高まります。
支持層が深い位置にある場合でも確実に建物を支えられる信頼性があります。
注意点
小口径鋼管杭工法は、3つの工法の中で最も費用が高額になる点が最大の注意点です。
杭を打ち込む際に大きな騒音や振動が発生するため、住宅密集地では近隣への事前説明と配慮が必要不可欠となります。
また、深い位置に強固な支持層が存在しない土地では施工できない場合があります。
鋼管の本数や長さによって費用が大きく変動するため、予算計画を慎重に立てる必要があります。
向いている土地
小口径鋼管杭工法は、軟弱層が8m以上30m程度の深い位置まである土地に適しています。
3階建て以上の建物や重量のある建築物を建てる場合にも推奨される工法です。
地盤の支持力を最大限に高めたい場合や、将来的な土地活用の自由度を保ちたい場合に最適な選択肢となります。
【工法別】地盤改良工事の費用の目安

地盤改良工事の費用は、工法によって大きく異なります。
ここでは、一般的な戸建て住宅の延床面積30坪を基準とした費用相場をご紹介します。
表層改良工法
表層改良工法の費用目安は、30坪の建物で30万円~90万円程度です。
坪単価は1万円~3万円程度が相場 Solidcubeとなっています。改良深度が浅いほど費用は抑えられ、逆に深度が深くなるほど費用は高くなります。
施工面積や土壌の状態、使用するセメント系固化材の量によっても変動します。
3つの工法の中では最も経済的な選択肢であり、予算を重視する場合に検討すべき工法と言えるでしょう。
柱状改良工法
柱状改良工法の費用目安は、30坪の建物で90万円~150万円程度です。
坪単価は4万円~5万円程度が相場となっています。
打ち込む柱の本数や深度によって費用は大きく変動し、支持層が深い位置にあるほど高額になります。
深さ4mで50本程度の杭を打つ場合、約100万円が目安とされています。
最も多く採用される工法であるため、複数の業者から相見積もりを取ることで、適正価格を見極めることが重要です。
小口径鋼管杭工法
小口径鋼管杭工法の費用目安は、30坪の建物で120万円~200万円程度です。坪単価は5万円~7万円程度が相場となっています。
使用する鋼管の本数や長さ、打ち込む深さによって費用は大幅に変動します。
5階建てなど重量のある建物で40mの深さまで打ち込む場合、1000万円を超えることもあります。
3つの工法の中で最も高額ですが、深い軟弱層に対応できる唯一の選択肢となる場合もあるため、地盤調査の結果を踏まえて検討する必要があります。
地盤改良工事を依頼する際の注意点

地盤改良工事を依頼する際は、まず複数の業者から相見積もりを取ることが重要です。
見積書には工事内容、使用材料、施工方法、保証内容が明記されているか確認しましょう。
地盤調査のデータを業者に提示し、提案された工法が適切かどうか専門家の意見も参考にすることをお勧めします。
施工中の騒音や振動について近隣への配慮が必要な場合は、事前に挨拶回りを行うことでトラブルを防げます。
また、施工後は必ず地盤保証書を発行してもらい、万が一の不同沈下に備えることが大切です。
まとめ
地盤改良工事は、安全な住まいを実現するために欠かせない重要な工程です。
表層改良工法、柱状改良工法、小口径鋼管杭工法の3つの工法があり、それぞれ適用範囲や費用が異なります。
費用相場は30坪で30万円~200万円程度と幅があるため、地盤調査の結果に基づいて最適な工法を選択することが重要です。
予期せぬ出費に慌てないよう、土地購入前に地盤の情報を収集し、予算に地盤改良費用を組み込んでおくことをお勧めします。
信頼できる施工業者を選び、適切な地盤改良を行うことで、長く安心して暮らせる住まいを手に入れることができます。
まずは地盤調査を実施し、専門家に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。