昨今、人が生活する建物は必ずといってよい程に断熱がされています。住宅が断熱されていないと外の暑さや寒さを遮断できず、屋内で過ごす人が心地よく生活できません。
今回のコラムでは、そんな住宅の快適性に大きく影響する外壁の断熱材について、詳しくお伝えしていきます。
外壁に使用される断熱材の種類や断熱工法などについて理解すれば、新築や修復、リフォームをおこなう際に、住宅やニーズに合った断熱材を選ぶ判断材料になるのではないでしょうか。
近年、環境の変化による異常気象やそれにともなう自然災害などについての話題が取り上げられることが増えました。住宅に適した断熱材を採用すれば室温が外気温に影響されにくくなるため、屋内で心地よく生活を送れます。
外壁に使用される断熱材の種類や工法が知りたい人は、ぜひ本コラムを読んで参考にしてくださいね。
目次
どの断熱材を選ぶべき?外壁に使われる断熱材の種類は主に4つ
断熱材やそれを施工する際の工法にはさまざまな種類があり、外壁に使われる断熱材は主に4つに分けられます。それらを以下にまとめました。
- 無機質繊維系
- 天然素材系
- 発泡プラスチック系
- 断熱塗料
上記の4つに分けられた断熱材の種類には一つひとつに特徴があり、採用するメリットやデメリットがどちらも存在します。建物の工法や構造によって選択する断熱材に違いがでるため、お住まい建物や環境に適したものを選択するとよいでしょう。
ここでは、それぞれの断熱材の特徴や違いをお伝えします。
無機質繊維系
無機質繊維系の断熱材で代表的なものといえば、ガラスから作られるグラスウールです。それ以外には、鉱物から作られるロックウールなども無機質系繊維の断熱材の一つとして知られています。
無機質繊維系の断熱材を採用する大きな利点の一つは、安価でコストパフォーマンスに優れている点です。昔は断熱材が住まいに与える影響はあまり理解されていなかったため、安価なグラスウールが多く採用されていた時期もあり、熱に強い性質を持つロックウールやグラスウールは火事などが発生しても安心といわれていました。
天然素材系
天然素材系の断熱材でよく知られているものは、羊毛やセルロースファイバー、コルクなどです。羊毛は断熱性があると考えられ、昔からよく衣服の素材として使われています。天然素材の羊毛は有害物質などを懸念する必要はなく、天然素材で環境にも配慮された素材です。
その他にも、天然素材系の断熱材であるセルロースファイバーは古紙や新聞紙を原料としており、環境に優しい断熱材として見直されています。
天然素材系の断熱材を採用する利点として挙げられるのは、自然由来の素材で高い吸湿性を持つ点や環境に優しい点などです。ですが、自然由来の素材を使って断熱するため、必要な費用が高くついてしまう欠点もあります。
発泡プラスチック系
発泡プラスチック系の断熱材は、その名の通りプラスチック成分の中にいくつもの気泡を閉じ込めた断熱材です。よく使われる発泡プラスチック系の断熱材として、硬質ウレタンフォームがあります。
発泡プラスチック系を採用する利点は、耐水性に優れ、湿気に強い点です。また、軽い素材のため自由に加工しやすく、張り付ける際に隙間ができにくい点も魅力なのではないでしょうか。近年、断熱性能や気密性能に優れた住宅の人気が高まっており、そういった住宅には発泡プラスチック系の断熱材が使われています。
グラスウールと比較すると高価ですが、耐久性や将来のリフォーム、優れた断熱性を考慮すると総合的には高くつくといえないのではないでしょうか。また、高い耐震性を持つ発泡プラスチック系の断熱材は、中古住宅などを改修する場合にも外張り断熱をおこなうのがおすすめです。
断熱塗料
断熱塗料には遮熱効果があるものの、名前からも分かるように塗料であり、断熱材ではありません。塗料である断熱塗料には、すでに紹介したような素材ほどの効果は見込めませんが、外壁の改修する際に合わせて使用すれば断熱効果を向上が期待できます。
断熱材とは違い、断熱塗料は厚みを持たせられず、室温を保つ効果も期待できません。屋外からの熱を遮るような、それ以外の方法による断熱を手助けするのには適していますが、断熱塗料を塗るだけで住宅の断熱をするのは難しいです。「遮熱」と「断熱」は異なるため、住宅の断熱について考える際は気を付けましょう。
外壁を断熱する3つの方法!それぞれの違いを解説
外壁の断熱に使われる素材にも種類があるのと同様に、断熱の工法にも違いがあります。外壁を断熱する3つの工法を以下にまとめました。
- 外断熱
- 内断熱
- 断熱塗装
一つひとつの工法に特徴や効果の違いがあり、住宅の設計や構造によって採用される工法が異なります。ここでは、上記の3つの工法を詳しくご紹介します。
外断熱
外断熱とは、本コラムの主題である外張り断熱工法のことです。建物の外壁をひと続きに囲うようなかたちで断熱材を張るため、主に発泡プラスチック系の断熱材が使われます。
住宅全体を断熱材で囲うように張り付けるため、隙間が生じにくく断熱性にも優れている点が魅力です。隙間が生まれなければ外気が入り込むこともないため、結露にもなりにくいというメリットがあります。
ですが、これから紹介する内断熱と比較して外断熱は使う断熱材の量が多く、施工に必要な費用が比較的高額になる傾向にあるのが難点です。とはいえ、施工に高額な費用がかかるものの、断熱性が向上すると冷暖房の使用頻度が減少するため光熱費が節約でき、耐久性にも優れているためメンテナンスなどにかかる費用も軽減されるので一概に高額とはいえません。
内断熱
内断熱とは、建物の内側に断熱材を施工する断熱工法のことです。以前はほとんどの場合で内断熱を採用していたほどに、発泡プラスチック系の断熱材が使われるようになるまで内断熱は多く採用されていました。
内断熱では建物と外壁の間に充填して住宅を断熱します。その際に使われる断熱材は羊毛やグラスウール、発泡プラスチック系などです。また、それ以外にも「吹き付け」と呼ばれる、液体を硬化させる方法で建物を断熱する場合もあります。
以前、吹き付けと呼ばれる方法で使われた断熱材にアスベストが含まれているとして大きく話題になりました。ですが、現在ではしっかりと法律などで規制されているので、アスベストについて懸念する必要はないかと思います。
ですが、吹き付けと呼ばれる方法には特殊な技術が要求されるため、施工にかかる費用が高額になったり、技術が不足しているとムラができて断熱性が低下することもあるため気を付けましょう。
内断熱は外断熱と比較して使用する断熱材の量が少なく、施工にかかる費用も安価に抑えられる利点があります。ですが、グラスウールを使用した充填工法や吹き付けと呼ばれる方法では建物と外壁の間で隙間が生じやすく、発泡プラスチック系と比較して耐久性でも劣っているなど、内断熱には注意点があることも知っておきましょう。
断熱塗装
すでにお伝えしたように、断熱塗料には遮熱効果こそありますが、断熱材ではありません。外壁を改修しながらメンテナンスできますが、断熱効果は期待できず断熱材とは異なるものです。
どのように工事する?断熱材の施工手順を工法別に紹介
住宅の断熱工事では、どのような順序で外壁に断熱材を施工するのでしょうか。ご自身も知識を身につけておけば、工事中の手抜きやミスの抑制につながるでしょう。ここでは、以下の2つの工法で断熱材を施工する際の手順をご紹介します。
- 外断熱
- 内断熱
- 断熱塗装
外断熱をおこなう際の順序
- 構造用の合板を設ける
- 断熱材を一時的に固定する
- 継ぎ目部分にテープなどを張り付ける
- 透湿防水シートの施工(この工程を飛ばす場合もあります)
- 壁の下地材を設置する
- 外壁材パネルを取り付ける
基本的には、上記のような手順で外張り断熱を施工します。中古住宅などのすでに存在する建物に外張り断熱を施工する場合は一旦もとの外壁を解体するため、その分の工事に追加で費用がかかることもあるため注意が必要です。また、外壁も新しく建て直す場合は、それ以上に高額な費用がかかります。
内断熱をおこなう際の順序
外張り断熱と比較すると内断熱の施工は単純です。そのため、多くの場合、新築か中古かに関わらず建築の途中に施工されます。
- 断熱材を部材や柱の隙間に詰める
- 設置した断熱材を固定する
- 透湿防水シートを設置する
内断熱の施工では断熱材を詰める工程がとても大切です。特定の隙間にうまく詰めなければ、そこから外の空気が入り込み断熱性を下げたり、結露を起こすことがよくあります。特に注意したいのが配線周りなどの細部の隙間です。
また、隙間以外にも、厚さにバラつきが発生しないように気を付ける必要があります。厚みにバラつきは歪みや型崩れにつながり、ひいては隙間が生じてしまうため注意しましょう。
吹き付け工法で内断熱を施工する場合の手順は、専用の機械を使用し、施工をおこなう場所で配合し混ぜ合わせた後に吹き付けるといったものです。吹き付けてから扇風機などを利用して乾燥させなければならず、ある程度時間がかかるのと、その時の天候が影響する場合もあります。
断熱塗装を塗装する際の順序
断熱塗装を施工する際の順序は一般的な塗装と変わりません。足場を設置して、しっかり汚れを取ってから改修や補修を含めて下地を塗っていきます。断熱塗料の塗装では、剥がれなどを避けるために何度か重ねて塗るため、一度塗るだけではありません。
ご自身での断熱塗装に挑戦する方も見受けられますが、しっかりと効果を発揮させたいのであれば、専門的な技術を持った方に施工を依頼する方が安心できるでしょう。
外壁に使う断熱材を選ぶ際に注意したい3つのポイント
外断熱か内断熱かなどの工法の選択も重要ですが、建物の構造と相性がよい断熱材を選んだり、先のことを見据え適した断熱材を採用することも大切です。外壁を断熱する際に使用する断熱材を選ぶ際には、以下の3つのポイントに注意しましょう。
- 断熱材の工法や建物の構造との相性
- 火災に備えた耐熱性
- 防湿シートが必要な場合もある
例えば、断熱性に優れた断熱材を採用すれば心配ないわけではなく、断熱材の工法や建物の構造との相性を考慮することが重要です。
特に、断熱材の厚みや性能は大切なポイントで、厚みが増せばその分だけ断熱性能が向上するとされています。ですが、内断熱を採用している場合は厚みが増すと室内の面積を圧迫することがありますし、厚くすれば費用も多くかかるなど、利点だけではありません。
それ以外に気を付けたいポイントとして挙げられるのが、火災が発生した際に重要になる耐火性です。外壁の断熱材を選ぶ際には、火災を想定して選ばなくてはなりません。火災が発生した際に燃え広がることを防ぐためにも、採用する断熱材は高い耐火性を持つものや、加工が施されているものなどにするとよいでしょう。
そして、グラスウールなどの断熱材を採用するのであれば、防湿シートを取り付ける必要があります。グラスウールは水に対して脆弱で、湿気対策を施さなければグラスウールが水分を含み、繊維がくっつくことで空気層が消えてしまうため気を付けましょう。空気層がなくなると断熱性が下がってしまうため、防湿シートは欠かせません。
まとめ
外壁に使用される断熱材や工法にはさまざまな種類があり、それぞれに特徴があります。例えば、断熱材は主に3つに分けられ、それぞれ価格や断熱性などが異なるため、建物の構造やニーズに適したものを選ぶとよいでしょう。
断熱材には安価で耐熱性に優れた「無機質繊維系」のものや自然にやさしい「天然素材系」のもの、耐水性に優れ加工がしやすい「発泡プラスチック系」があります。特に、発泡プラスチック系の断熱材は張り付ける際に隙間ができにくく、断熱性や気密性に優れている魅力的な断熱材です。
断熱材と同様に断熱工法にも違いがあり、「外断熱」と「内断熱」があります。外断熱は断熱性に優れるが施工費用が比較的高額なのが特徴です。ただし、優れた断熱性は将来の光熱費の節約にもつながるため、一概に高くつくとはいえないでしょう。
内断熱は断熱性能こそ外断熱に劣るものの、施工にかかる費用が安価に抑えられる点が魅力です。ですが、発泡プラスチック系と比較して耐久性で劣っていたり、特定の工法で内断熱をおこなうと建物と外壁の間で隙間が生じやすいなど、注意点もあります。
それ以外にも、断熱の施工に合わせて建物に塗装すると断熱性を向上させられる「断熱塗料」がありますが、こちらの施工だけでは外断熱や内断熱ほどの断熱効果は期待できません。
断熱材や工法の種類や特徴を把握し、断熱材の工法や住宅の構造との相性、耐火性や耐湿性の重要性を理解すれば、住宅やニーズに合った断熱材が選びやすくなるのではないでしょうか。
外壁に使用する断熱材を選ぶ際には、ぜひ今回のコラムを参考にしてくださいね。