皆さんは「屋根断熱」をご存知でしょうか。今回のコラムでは、「屋根断熱」の特徴や工法を詳しく解説していきます。また、屋根で断熱をする屋根断熱の他にも建物上部を断熱する方法があり、それが天井で断熱をする天井断熱です。
どちらにもメリットやデメリット、特徴があり、住宅の構造や目的によって適した断熱方法は異なるため、こちらもご紹介します。
リフォームや新築を検討している方にも、ご自宅に採用された断熱方法が屋根断熱なのか天井断熱なのかという情報は役立つはずです。ぜひ、屋根断熱への理解を深めてみてください。
目次
屋根断熱はどのような断熱方法なの?その効果と種類
屋根断熱とは、屋根で断熱をして住宅の断熱性を向上させる方法です。
屋根断熱では外気を屋根で遮断するため、天井と屋根の間にスペースが生まれます。こうしてできた空間はリビングなどの他の部屋と似たような環境になり、屋根裏部屋やロフトを設けるなど、使い道はさまざまです。
屋根断熱には「充填断熱」と「外張り断熱」があり、どちらを採用するかで効果に違いがでます。
充填断熱の場合、使われる素材は発泡プラスチック系(スタイロフォーム・パイナルフォームなど)、もしくは繊維系(セルロースファイバー・グラスウールなど)です。
外張り断熱の場合、発泡プラスチック系の断熱材であるXPS材やEPS材などがよく使われています。ご紹介した断熱材の特徴を知っておけば、断熱をおこなう際により適した方法や素材を採用できるので参考にしてくださいね。
また、屋根断熱を採用する場合、棟からの排気は欠かせません。というのも、屋根断熱は断熱材の上部に垂木を置き、野地板でおおい、間に空気の層をつくることで屋根で暖まった空気を外へ出す通気構造だからです。
すでにお伝えしたように、屋根断熱では、屋根裏を室内と同様の環境に保てるので部屋として活用できるだけではなく、天井を高くして天井高の住宅に仕上げられます。これは、屋根断熱を採用する大きなメリットです。
天井断熱の場合そうはいかず、温度が変化しやすいため屋根裏の空間に長い時間留まることが難しくなります。
また、ロフトや物置として屋根裏の空間を活用したり、近年人気がでている梁を見せる勾配天井に仕上げるなど、デザイン性や解放感にこだわりたい方には屋根断熱がよいでしょう。
屋根断熱には「外張り断熱」と「充填断熱」がある
屋根断熱の工法にはいくつか種類があり、「外張り断熱」と「充填断熱」があります。どこかで聞いたことがある方もいるのではないでしょうか。
「充填断熱」は構造材の隙間に断熱材を入れる方法で、「外張り断熱」は住宅の外側に断熱材を張り付け全体を覆うことで断熱します。
屋根の構造や家の外観によって選択することもありますが、リフォームを依頼したりご自身で断熱をおこなう場合は、「外張り断熱」を選ぶ場合が多いです。というのも、既存の住宅に「充填工法」で断熱をおこなうと、天井を撤去する必要などがあるためかなり大規模な工事になり、時間や費用がかかります。
以前は天井断熱で断熱することが多く、屋根断熱はあまり主流ではありませんでした。天井断熱はどのような厚みの断熱材でも使用できる利点があり、屋根断熱と比較して施工する面積が狭いため、施工費を削減できます。
天井裏のスペースにはさまざまな使い道があり、「屋根小屋」や「屋根裏」と呼ばれ、収納や物置、人が生活する空間にも活用されてきました。
ですが、屋根断熱を行っていない天井裏の環境は外と変わらないため、外気と内気の温度差が原因で結露や湿気、雨漏りになることがあるなど、あまり心地よい空間とはいえません。
現在では屋根裏という言葉を聞く機会も減り、それに変わって「ロフト」が一般化しつつあります。そのため、以前は天井断熱が多く採用されていましたが、現在は屋根断熱を行っている住宅が4割以上に増加しました。
屋根裏を何かに活用したい場合でなければ、屋根を断熱する屋根断熱を採用することがほとんどでしょう。また、吹き抜け天井になっている住宅では、屋根の屋内に面する側に断熱材をつける
方法で屋根断熱を行っています。
屋根断熱にはお金がかかる?メリットとデメリットをご紹介
ここまで、屋根裏を室内と同様の環境に保てるなど、屋根断熱のメリットをいくつかお伝えしました。ですが、そんな屋根断熱にはメリットだけではなく、デメリットもあります。
ですが、それは屋根断熱に限ったことではありません。どのような素材や工法にもメリットとデメリットが存在します。それを理解した上で、使用する素材や工法を選択できれば、住宅をより理想に近い心地よい空間に仕上げられるでしょう。
断熱材は、新築や改修が済んでしまうと目視できないため、あまり意識が向きません。ですが、住宅寿命や快適性を考えると、どの断熱工法や素材を使用するかはとても重要な選択です。ぜひ、これからご紹介する屋根断熱のメリットとデメリットを参考にして、ご自宅に適した工法や素材を考えてみてください。
屋根断熱のメリットは?
すでにお伝えしたように、屋根断熱を採用する大きなメリットの一つが屋根裏の空間を利用できることです。多くの住宅が屋根断熱を行っている理由として、屋根裏の空間を生活に合わせて活用できることがあげられます。
吹き抜けやロフトを作ったり、開放感を感じさせる設計にしたりと、室内を活用する昨今の住まいでは天井断熱ではなく屋根断熱を採用して屋根裏の空間も利用をする場合が多いです。
特に、敷地に余裕がない場合や収納が足りていない場合は、屋根裏がとても役立ちます。季節ものの服をしまう場所や、要らないものを収納しておく場所があるのは大きな利点ではないでしょうか。
また、屋根断熱を採用すると、屋根裏と室内が同様の環境に保てます。そのため、夏の暑い季節でも屋根裏の空間で心地よく過ごせるのもメリットの一つです。また、屋根裏以外のお部屋の快適性も保ってくれます。
ですが、しっかり断熱材がつけられていないと、外気温に影響されやすいだけでなく、防水などが不十分だと雨漏りなどの原因となるため注意が必要です。
隙間なくきっちり断熱材をつけることや、厚さを持たせて断熱性能を向上させましょう。
また、専門的なことなので、ご自身での判断が難しい場合もあります。そういった時は専門の業者に依頼をし、実際に見て判断してもらったり、定期的に点検やメンテナンスをお願いするとよいでしょう。
隙間をつくらずに断熱材を施工すれば気密性も向上します。そうすれば、屋内の温度も管理しやすくなりますし、光熱費の節約にも繋がるなど、メリットが多いです。隙間をつくらずに施工したい場合は、繊維系の断熱材ではなくボード状の断熱材を使うとよいでしょう。また、ボード状の断熱材は厚みにばらつきがなく、厚みを制限なく選択できます。
屋根断熱のデメリットは?
屋根断熱を採用するさまざまなメリットをお伝えしましたが、デメリットも存在します。
すでにお伝えしたように、屋根断熱を施工すると屋根裏の空間を利用できるようになりますが、メリットばかりではありません。利用できる空間が広がれば、必要な冷暖房費も増加するでしょう。
ですが、しっかりした断熱材を使い、抜け目なく施工をすれば、屋内の空気の循環が改善されて冷暖房費も抑えられます。
それ以外にデメリットとしてあげられるのは、天井の面積と比較して屋根の面積の方が広いので、必要な断熱材の量も増加する点です。とはいえ、外張り断熱か充填断熱かで費用が異なりますし、断熱材の厚みによっても違います。構造上の問題から断熱材の厚さが限られる場合もあるため、施工前に確認しましょう。
また、「温度を調節する空間が広がると、光熱費が増加するのでは?」という疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。ですが、それにもいくつかの対策方法があります。例えば、勾配天井ロフトにプロペラやシーリングファンなどを取り付けて、屋内全体の空気を循環させる方法が有効です。それ以外にも、屋根に遮熱効果をもつ塗料をぬるなどの方法でも対策できます。
ですが、最近では高気密・高断熱の住宅が一般的となり、「HEAT20」や「ZEH住宅」と呼ばれる高い基準をクリアし、環境負担の低い節電につながる住宅が増加しています。そのため、国から保証を受けられる場合もあり魅力的です。
高水準住宅では、保温性に優れた断熱材を使っていたり、24時間換気システムが導入されていたり、以前と比べるとデメリットが解消されつつあります。
まとめ
断熱工法にはさまざまな種類がありますが、どれもメリットとデメリットの両方を持っていて、使用する素材や工法によって性能や効果が違います。
何を基準にして選択するかは、人それぞれ、用途などによって異なるでしょう。
冷暖房による光熱費を節約できるなど、費用面以外にも、これから先、実際に住む上で心地よく過ごせるかどうかも大切です。
敷地が狭く、利用できる空間も広くない中で費用面だけを考慮して断熱方法を選択すると、後になって部屋が不足したり、収納スペースが足りずに頭を抱えるかもしれません。
また、さまざまなデメリットを解決しつつ、費用も節約するためにも、まずは専門家の方と話し話し合ってから決めましょう。
住宅の空きスペースが不足したり、屋根裏の空間をおしゃれに活用したい場合は、屋根断熱の採用を検討してみてください!