住宅の断熱方法は主に二つに分けられ、それが「外断熱(外張り断熱)」と「内断熱」です。今回のコラムでは、外断熱(外張り断熱)は、内断熱と比較してどのような特徴を持つのかを解説します。また、気になる疑問にもお答えするので、ぜひ参考にしてください!
目次
外断熱とは?
木の柱や鉄筋コンクリートなどの構造体の外側に断熱材を付けて断熱する方法を「外断熱」と、まとめて扱われることがありますが、厳密にはRC造(鉄筋コンクリート造)と鉄骨造や木造では工法が違います。
RC住宅の外断熱工法
RC造(鉄筋コンクリート造)で、コンクリート構造体の外側に断熱材を付けて断熱する方法が「外断熱」です。また、鉄骨造や木造との違いを示すために「RC外断熱」と呼ぶ場合もあります。
木造住宅・鉄骨造住宅の外張り断熱工法
鉄骨造や木造で「外断熱」と呼ばれる方法は、厳密には「外張り断熱」です。パネル状のEPS(発泡スチロール)断熱材を、柱の外側に張り付けて断熱します。
「外張り断熱」は、柱の外側に断熱材を付けて断熱する方法のことです。
外断熱と内断熱の違い
「外断熱」の他にも「内断熱」という断熱方法があります。「内断熱」は「外断熱」と比べて、どのように異なるのでしょうか。
内断熱とは
「外断熱」の場合と同様に、RC造と鉄骨造と木造では「内断熱」の工法に違いがあります。RC造を断熱する場合、コンクリートの室内側に断熱材を付けますが、鉄骨造と木造の建物では柱と柱の間に断熱材を付ける「充填断熱工法」による断熱を「内断熱」と呼ぶことが多いです。
資材の違い
断熱のために使われる資材も、内断熱と外断熱とでは違います。RC造の内断熱は、発泡ウレタンの断熱材を内壁側に付け、その上に石膏ボードを張り、最後に漆喰やクロスなどで仕上げる場合が多いです。
鉄骨造と木造の充填断熱工法で使用する断熱材は、グラスウールやロックウールなどの無機繊維系断熱材や、場合によっては、発泡ウレタンが使われます。
外断熱を採用した場合、住宅の構造や仕様はどうなる?
外断熱材
RC外断熱に使用される断熱材は、主にロックウールやEPSです。透湿性(湿気を通すが水は通さない)が高く、構造体と室内の環境を守ります。鉄骨造と木造の外張り断熱に使用される主な断熱材はEPSです。
外壁材
塗り壁材を使用して左官仕上げをする湿式工法と、サイディングやガルバリウム鋼板をはじめとする金属で仕上げる乾式工法があります。鉄骨造と木造の外張り断熱でも、RC外断熱でも同じです。
タイルで仕上げる場合もありますが、タイルを使用すると重さや厚みがでるため、施工が難しくなります。
内装
RC外断熱の内装でよくあるのがコンクリート打放し仕上げですが、保護剤を塗布する場合もあります。それ以外にも、珪藻土などの左官仕上げをしたり、コンクリートに直でクロスを張ることも可能です。
なお、鉄骨造と木造の外張り断熱の内装に使用される下地は石膏ボードですが、左官仕上げをしたりクロスを張る場合は、RC外断熱と同じ下地を使用します。
窓
住宅全体の断熱性を向上させるために、窓の断熱性にも注目しましょう。窓の断熱性が優れていれば、暑い季節は涼しく、寒い季節には暖かくなり、光熱費を節約できます。
住宅全体の断熱性を向上させたい場合、サッシは木製サッシや樹脂サッシ、窓ガラスにはトリプルガラスや耐熱性に優れたLow-E複層ガラスなどを取り付けましょう。これは、鉄骨造と木造の外張り断熱でも、RC外断熱でも同じです。
通気構造・通気層
RC外断熱の乾式工法の場合、下地材を断熱材の外側に付けて通気層を設け、その上にサイディングやガルバリウム合板を張ります。湿式工法には透湿性を持つ素材が使われるため、通気層は設けません。
鉄骨造と木造の外張り断熱の場合は、下地材をEPS断熱材の外側に付けて通気層を設け、外壁材をその上から張ります。
外断熱を採用する4つのメリット
外断熱のメリットをご紹介する前に、住宅の断熱性に関係する「ヒートブリッジ(熱橋)」について少し解説します。
ヒートブリッジ(熱橋)とは、断熱材以外の材料が建物の断熱層を貫通しているなどが原因で生じる、熱が伝わりやすい部分のことです。寒い時期にはその部分から熱が逃げ、その部分に近い室内表面温度はそれ以外の部分と比較して低下し、結露することもあります。
また、暑い時期には、その部分から外部の熱が伝わり屋内の環境が悪化するなど、住宅の断熱性に関係する現象です。
これを踏まえて、鉄骨造と木造の外張り断熱とRC造外断熱のメリットを4つご紹介します。
- 断熱効果に優れている
- 気密性の確保が容易
- 結露が発生しにくい
- 柱と柱の間のスペースを活用できる
1.断熱効果に優れている
RC外断熱を採用した場合、内断熱と比較してヒートブリッジ部分が少ないので、断熱材の厚みが同じでも、より断熱性能に優れています。そのため、結露も起きにくいです。
また、内断熱のように、暑い季節の日光でコンクリートが日が暮れても熱を持つことがなく、冷房を切った後も、コンクリートが持つ蓄熱効果で長く涼しい状態を保てます。同じように、寒い季節に暖房を切った後でも、急に室内が冷えません。
また、外張り断熱を採用した場合、充填断熱ではヒートブリッジになる可能性がある柱の外側に断熱材を張ります。そのため、ヒートブリッジ部分が減少し、充填断熱と比較して、より優れた断熱効果を発揮するでしょう。
2.気密性の確保が容易
RC造の場合は、内断熱でも外断熱でも、開口部を除いて隙間がなく、気密性に優れているのが特徴です。充填断熱(内断熱)と外張り断熱と比べると、外張り断熱では柱が断熱材を分断させないため、充填断熱と比較して気密性を高めやすくなります。
3.結露が発生しにくい
断熱材が途中で分断されてしまう内断熱は、分断された部分がヒートブリッジになり結露が発生することがあります。ですが、RC外断熱の場合は、バルコニーのような外に突き出ている部分を除いてヒートブリッジにならないため、結露にくいです。
また、外張り断熱も気密性に優れているため、充填断熱(内断熱)と比較すると結露が発生しにくいです。
4.柱と柱の間のスペースを活用できる
鉄骨造と木造の外張り断熱の場合、室内側の柱と柱の間に空間がうまれるため、棚を設置するなどしてそのスペースを活用できます。
外断熱を採用する5つのデメリット
鉄骨造と木造の外張り断熱やRC外断熱を検討している人は、メリットだけではなく、デメリットも気になるのではないでしょうか。ここでは、外断熱を採用する際に注意したいデメリットを5つご紹介します。
- 建築費用が高額
- 外壁や屋根の施工時に気を付ける必要がある
- 外壁や屋根の施工時に気を付ける必要がある
- 採用していないハウスメーカーもある
- RC外断熱の住宅の外観はコンクリート打放しではない
1.建築費用が高額
RC造の外断熱の場合、内断熱と比べると費用はより高額になります。ですが、コンクリート打ち放しの内装にすると、内装にかかる費用は減るでしょう。
また、光熱費などの建築費用以外のコストまで考慮すると、一概に外断熱の方がコストが高いとはいえません。むしろ、長い目で見るとコスト削減につながります。
鉄骨造と木造の外張り断熱の場合は、施工費や資材費が高額になるため、充填断熱(内断熱)と比較して建築費用が高額になりやすいです。
2.外壁や屋根の施工時に気を付ける必要がある
RC外断熱の場合、外壁や屋根から水が入ると、入侵入経路を特定するのが難しいです。そのため、水漏れが発生しないよう、施工時には十分に注意しましょう。
また、鉄骨造と木造の外張り断熱の場合、外壁材を断熱材の上から付けるため、きちんと施工されていないと地震や経年劣化が原因で外壁がずれる恐れがあります。
3.外壁や屋根の施工時に気を付ける必要がある
気密性に優れているため、換気計画が欠かせません。空気を入れ替える過程で無駄が生じると、せっかく調節した室温が変わってしまいます。
室温をできるだけ上下させず換気するのに役立つのが、全熱交換器です。これを使用すると、換気時に室内の熱を回収するので、室温の上下を軽減できます。
4.採用していないハウスメーカーもある
ハウスメーカーは、各社が得意とする工法を用いたシリーズを展開するため、外張り断熱や外断熱には対応していないメーカーもあります。
工務店でも、得意な施工方法とそうでない施工方法があるため、外張り断熱や外断熱の実績があまりなく、得意ではない工務店もあるでしょう。ですが、依頼する設計事務所に外張り断熱や外断熱の実績がある場合、設計事務所の指導の元で施工できます。
5.RC外断熱の住宅の外観はコンクリート打放しではない
RC造の住宅を希望する人の中には、コンクリート打放しの外観が好みの人もいます。ですが、RC外断熱の場合、断熱材を付けるのはコンクリート壁の外側で、さらにその外側に外壁をという構成になるため、コンクリート打放しの外観にはなりません。
とはいえ、RC外断熱の住宅でも、居室ではない優れた断熱性が必要ない空間の外壁を、部分的にコンクリート打放しにすることは可能です。
外断熱を検討中の人に知ってほしい!よくある質問にまとめて回答
外断熱を検討している人の中には、外断熱のメリット・デメリットが気になるだけではなく、さまざまな疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。ここからは、外断熱や外張り断熱に関する、よくある質問にまとめて回答していきます。
外断熱工法はシロアリや火災に弱いの?
外断熱材に使用される「EPSは火に対して脆弱」という印象から、外張り断熱や外断熱は火災に弱いというイメージを持つ人もいます。ですが、断熱材の外側に外壁の仕上げ材が付けられているため、外断熱は必ずしも火災に弱いわけではありません。
シロアリに関しても、「EPSはシロアリに対して脆弱」という印象から、外断熱工法の採用に不安に感じている人もいるのではないでしょうか。そういった場合は、シロアリ防除効果が期待できる「防蟻EPS」という資材の使用を検討してみましょう。
外断熱を採用しても土間やバルコニーは設けられる?
バルコニーは設けられますが、RC外断熱の場合、バルコニーのコンクリートから屋内のコンクリートに熱が伝わることがあります。
ですが、「イソコルブ」という断熱部材を使用すれば対策可能です。この部材を建物のコンクリート構造体とバルコニーの間に配置すれば、バルコニーから室内へ熱が伝わりません。
外張り断熱を採用した木造住宅にバルコニーをつける場合、木材自体の断熱性に任せて、特に対策しないこともあります。また、建物とは構造の異なる金属製のバルコニーを設置すれば、屋外から室内へ熱が伝わりません。
玄関土間に関しては、EPS断熱材を土間コンクリートの下に敷くことで断熱が可能です。
床下の断熱方法は?
床下を断熱する方法には基礎断熱と床断熱の2種類あり、床断熱の場合は、EPS断熱材を床のすぐ下に張って断熱します。基礎断熱は、立ち上がり部分と、基礎の底面、外周から60センチメートルくらいの範囲にEPS断熱材を張り断熱する方法です。
また、EPS断熱材を基礎コンクリートの下(地面側)全面に張ることもあります。
メンテナンスは必要?
充填断熱・内断熱と、外張り断熱・外断熱のメンテナンス性はほぼ同じです。最近では、メンテナンスが30年間必要のない外壁材などもあります。
まとめ
「外断熱」とは、構造体の外側に断熱材を付けて断熱する方法です。RC造と鉄骨造と木造では工法が異なり、RC住宅の場合には、コンクリート構造体の外側に断熱材を付けて断熱します。鉄骨造と木造住宅の場合には、パネル状のEPS断熱材を柱の外側に張り付けて断熱しますが、これは厳密にいうと「外張り工法」と呼ばれる工法です。
外断熱を採用すると、ヒートブリッジが少なくなり、優れた断熱効果を発揮します。また、一部を除いて隙間がないため気密性にも優れていて、結露も発生しにくいです。また、鉄骨造と木造の外張り断熱の場合は柱と柱の間のスペースを活用できるなど、外断熱にはさまざまなメリットがあります。
外断熱にはメリットだけではなくデメリットもあり、その一つが高額な建築費用です。とはいえ、コンクリート打放なしにした場合の内装にかかる費用や、その後の光熱費などを考慮すると、一概に外断熱の方が高額とはいえません。それ以外には、換気計画が必要になること、壁や屋根の施工時に細心の注意が必要になること、採用していないハウスメーカーも存在することがデメリットとして挙げられます。
また、RC外断熱の場合、断熱材や外壁をコンクリート壁の外側に付けるため、コンクリート打放なしの外観にならないので注意しましょう。
住宅の断熱性能を向上させれば、快適に毎日を過ごせるだけではなく、光熱費の節約にもなります。